四葉の日記

カサンドラ症候群の四葉のブログです。

後ろ姿

カサンドラ自助グループでは様々な年代の方がいる。

私と同年代がもう一人いて。その子とは直接連絡先を交換してやり取りをしている。

最初は勝手に個人的に親しくするのは良くないかと思ったけれど、支援センターの自助グループ担当の方から「センターが絡まなくても、それぞれが繋がってお互いピア的な役割になり、その輪が広がって行くのが理想です」と言って下さったので、ホッとした。


実際、かなり、彼女に救われている。

私たちはお互い、主人が大好き過ぎて別れられないタイプなので話が合う。

辛かったことも苦しいことも、話すと「うちも!同じセリフ言われた!」と特性で合致することが多く、「一緒なの!?」と二人で笑ったり、あるある話を笑い飛ばせるのは本当に救われる。お互い愚痴を言ってスッキリする。


私たち二人が、共通して感じているパートナーへの印象は「後ろ姿」だ。

常にパートナーは我が道を行き、私たちを顧みたりはしてくれない。時々、ここで私が立ち止まっても主人はきっと気付かずにどんどん進んで行き見えなくなるんだろう。

そんな孤独感が常にあった。いつまで経っても、愛されている実感はない。

もしも私たちからパートナーに離婚を言い出せば「わかった」と言うだろう。引き止めたりもしてくれない。

大切にされていない感覚。

孤独。

悲しみ。

怒り。

それでも別れられない自分への嫌悪感。

もっともっと沢山の感情がグチャグチャになって心の中に溜まって行く。


昔々、大きなショッピングモールのCD店で、主人は視聴CDを聞いていた。一緒に来てるのに私は放置。仕方がないので別のCDを私も視聴する。

少しするとさっきまでいた場所に主人はいない、店内を探し回ってもいない。

もしやと思ってCD店を出ると、主人が一人別の店に歩いて行く後ろ姿があった。

「なんで置いて行くの!?」と聞くと

「いや、あっちの店見たいなと思って」との返答。


置いていかれると私は寂しい。

勝手に動けばはぐれる。

はぐれれば面倒な事になる。

それらの事まで思考が及ばないのだ。別の店が見たいと思ったら、そこにまっしぐら。


そんなショッピングモールやアウトレットモールで、巻かれる事件は本当に何度もあった。本気で私が泣く事が数回続いて、反省と学習をしたらしく、それ以降はない。


シンガーソングライターの柴田淳さんの「後ろ姿」という曲が、こんな私にはとても響く。まるで私ではないか…と思う。

結構柴田淳さんの曲は切ない曲ばかりのなので、ピッタリはまる曲が他にもある。追い追い紹介していきたいと思う。

主人の就職活動

自助グループで話をしていると、アスペルガーのパートナーあるあるが沢山出て来る。


カサンドラの妻達が最も恐れているのは、


勝手に仕事を辞める。

仕事を転々とする。

だと感じている。


発達障がいの方は、知らず知らずに人間関係のストレスを溜めていくので、突如限界が来て、仕事を辞めてしまうという流れが多いようだ。

それは大抵2〜3年周期が多いように感じる。


かく言う、うちも勝手に仕事を辞められた過去がある。

数年前のゴールデンウィーク前、

私「ゴールデンウィークってカレンダー通り休み?」

主人「あ〜四月末で仕事辞めるからずっと休み」

 人間、びっくりし過ぎると思考が停止する。

私「あ〜…そうなんだ…」

それだけ言った。


その後、半年以上就職活動をする素振りもなく、就職活動をするように促すと寝込んでいた。私が就職支援の仕事に就いていたので、テキストを渡した。就職活動のイロハが全て書かれているテキストだ。

しかし、半年後、何故就職活動をしないのかと問うたところ「こんなテキスト渡されただけで何も分からない!」とキレられた。これまで、支援して来た中で、細かい事が分からない人はいても、何も出来ない人は居なかったので、びっくりした。


今思えば、発達障がいだからだったのだ。

発達障がいの人の就職支援は、しっかりとレールを敷いて、明確にやるべき事の順序を示さなければいけない。

そうしなければ、本人は何をどうしていいか分からず、分からない事に不安になり、更に動けなくなるのだ。

半年以上、主人は何もせずに家にいた。

私は、仕事が特に忙しい時期で、過労で倒れたりしていた。毎日毎日、人の就職支援。いや…私は他人の就職のお手伝いをしている場合じゃないんだ!自宅には無職で何も活動していない人間がいるんだ!と、毎日が本当に苦しかった。仕事中は嫌なことを忘れられるどころか、その現実を突きつけられる毎日だった。

あの頃、発達障がいだと知っていれば、あんなに長く苦しまなかっただろうなぁと思う。


結局、私が業を煮やし、履歴書やキャリアシートを当時の同僚のプロに添削を依頼した。そして求人をいくつかピックアップし、主人にプレゼンをし、求人票を渡し、

「仕事をしていない人と結婚生活を継続は出来ません。実家に帰ります。」と家を出た。

数日後、私が仕事中に携帯に電話をして来て「いまA社の面接受けて来ました。たぶん感触的に、今日明日には結果連絡が来て採用になると思う。すぐにでも来て欲しいという感じだった。他にB社も受けているが、結果はまだ。C社はまだこれから面接。どうしよう?」

と。

レールを敷けば、この通り、即行動に移せたのだ。


もちろん、全ての発達障がいの方が仕事が続かないという訳ではない。

例えば、研究職や自営業に就けば、障がい特性が活かせる上にストレスは少なく、何の問題もなく仕事に打ち込める。

また、ちょうど本人のリズムと合う職場、人間関係にはまれば、長く勤められる。

そうでなくても、ストレスコントロールさえうまく行えば、問題なく続けられる。しかし、これには支援機関や良き理解者が近くにいる事が必要になるかもしれない。


主人は今の仕事が、そろそろ三年目になる。

ストレスを溜めに溜めており、夜にうなされるレベルまで来てしまっている。いつ仕事を辞めてしまうか戦々恐々としている。

結局転職をしたとしても、そこでも数年でストレスの限界を迎え、同じ事の繰り返しになるのだ。

それを解決するには、本人がストレスを何とかしたいと切に願い、支援機関の利用やカウンセリングを受けたいと思うことから始まる。周りが無理に勧めても、効果は出ない。

ストレスコーチングやアサーションを学び、ソーシャルスキルレーニングを受けて、社会の中での立ち回り方や、自分のコントロールを行えるようにしなければならない。

カサンドラが出来る限り苦しまない方法

私にとって、アスペルガーの主人との生活は常に努力の日々だと思っている。

孤独をどう紛らわせて生きて行くかの努力だ。


うちの主人は、アスペルガーと言っても、比較的軽度。心に余裕があれば、定型発達(発達障がいではなく、健常に発達出来た)の人と、あまり変わらなく感じる。あくまで「感じる」であって、変わり者である事は変わらない。

疲れたり、心に余裕が無くなると一気に障がい特性が出てくる。

私はいつも「キャパオーバー」と言っている。主人は主人のキャパシティが決まっていて、それを超えると一気に特性が溢れ出す。

まるで別人になる。

例えると、飼い猫だと思う。飼い猫が間違って家の外に出た途端、野生の本能が出てしまって、目つきが変わる。飼い主にも牙を剥く。まぁ…そうじゃない飼い猫も沢山いるだろうけれど…(笑)

特性が出た主人は目つきが変わる。

鋭くなり、人を寄せ付けない。

私に対して敬語を使い、嫌悪感を露わにしてくる。

これにはかなりのショックを受ける。

そんなに私のことが嫌いなの!?と、悲しくて苦しくて消えたくなる。

まるで記憶喪失になったかのような別人。


そういう時は、大体、主人自ら、黙ってどこかへ出て行く。一人になりたいんだと思う。

基本的に真夜中まで帰らないので、いつ帰って来ているのか私は知らない。

私はショックで眠れなくなるので、薬の力で眠る。


カサンドラは、孤独との戦いだと思う。

自分がどれだけ疲れていても、体調を崩していても、甘えたくても、アスペルガーのパートナーがキャパオーバーになっていてたら、一人で解決しなくてはいけない。

キャパオーバーになるタイミングやその容量は、その時々で違っていて予想は全く出来ない。

もちろん、あまりに溜まってくると「あ…来るな…」という予想は出来る。ただ、突然の場合も多くあるのだ。


数分前まで、穏やかだったのに、突然突き落とされるなんて事は日常茶飯事。

ジェットコースターのような生活だと感じる時もある。


そんな生活の中で、私は、孤独を紛らわせる方法と、主人となんとかやっていく方法を少しずつ、本当に少しずつ、身につけようと努力している。

今のところ心がけている事は…

○好きな事をする

  趣味やゲーム、自分の好きな事を何でも出来るだけ多く探す。

○一人であちこちに出かける

  主人が居なくても楽しめる力をつける。

○別々に過ごす時間を増やす

  距離が近ければ近いほどぶつかってしまう。また、発達障がいの方は人と関わる事だけでもストレスになる。家族でも、夫婦でも、恋人でも、関係性に関わらず、自分以外の人と過ごすのが苦手。でもそれに気付いていない発達障がいの方は多い。知らず知らずにストレスを溜めている。だから、一人の時間をこちらから作ってあげる。そしてその時間を私は私の為に使い、ストレスにしないように心がける。

○シャッターを無理にこじ開けない

  これも私が勝手に名付けているのだがキャパオーバーになった主人はまるでシャッターを閉じるように自分の殻にこもる。私は締め出されたような寂しさに襲われて、昔はそのシャッターをこじ開けようとしていた。それはしてはいけなかった。キャパオーバーなのだからもう対応など出来ないのだ。こじ開けるイコール自殺行為。過激な表現だけれど…。自ら傷つきに行くようなもの。ひどい返り討ちに遭う。そしてお互い傷つく。

○自分の心の状態を把握する

  私自身の心が壊れる前に、対処するためだ。手遅れになると動けなくなってしまうので、これは本当にしっかり把握して判断しなくてはいけない。早め早めに、物理的距離を取る必要がある。私は実家に帰るようにしている。簡単に実家に帰る事が出来ない場合は、避難場所をなんとか考えておいた方が良いと思う。最悪、ホテルへ避難などもありかもしれない。

○話せる人を作っておく

  私は当初、主人がアスペルガーだとは誰にも言えなかった。正しく理解して貰えるかも分からなかったからだ。でも少しずつ、信頼できる人、障がいに理解がある人へ話すようになった。ただ一点気をつけたいのは、カサンドラへの理解がある人はほぼ居ないと考えて良いという点。発達障がいの支援をしている人や専門家以外では、カサンドラ自体を知らないのが当たり前。たとえ知っていても、カサンドラの実情やどんな苦しみがあるかは、カサンドラ症候群になった人にしか分からない。知識のない人に話すのだから、こちらが傷つく事を悪気なく言われることもある。そこを理解した上で話す必要がある。この点で、自助グループに参加する意義がとてもある。

○定期的なストレス発散

  私の場合、ヨガとカラオケだ。ヨガは体にも心にも効く。カラオケは最近やり始めたストレス発散法。一人で行く。

○自分の頑張りを褒める

  一番簡単そうで、一番難しい。日々、アスペルガーのパートナーの対応に神経を使っている。そんな自分を認めたい。頑張っている自分を責めるなんて事はしたくない。本当はパートナーに褒めて貰えると良いのだが、それはなかなか望めないと思うので、自分で褒めよう。

○どちらがストレスか比べる

発達障がいの人と暮らすと、我慢をしなければいけない事もある。それを延々続けているとそのうち潰れてしまう。究極の選択になるのだが…我慢をする方がストレスか、我慢をせずパートナーにぶつけて何か反撃される方がストレスか(反撃がない可能性もある)、それを選ぶ。例えば、反撃されて自身が再起不能になる可能性があるなら、我慢を選択する。反撃にも負けない余裕がある時は我慢はしないを選択する。


長々と思いつくまま書いてしまった。

発達障がいは、その人その人で特性の出方が全く違う。

自分に合った対処法を少しずつ身につけていけたらと思う。

なぜ…

どうして私たち夫婦はこんなに揉める事ばかりなのか。

どうしてこんなに辛いのか。

どうして主人はあんなにキレやすいのか。


周りの夫婦は幸せそうに見えてしまって、辛くて、誰にも相談ができなかった。

たまに相談すると、「うちもそう!」「男ってそんなもんだよ」と一蹴される。

違う…違うんだ…。そんな笑って話せるレベルじゃないのに。死にたくなるほど辛いのに。

揉める頻度もかなりの短いスパンでやってきて、どんどん心を削っていく。回復する前に次の揉め事がでてくる。


どうして…。


そればかりだった。


どうして別れないのか。

それは人それぞれ理由がある。

○愛している

○金銭的に別れられない

○別れても次に素敵な人に出会えるか不安

○子供がいて別れられない


私は、最近分かってきたのだが、

正直、悔しいけれど、主人を愛している。

運命の人に出会える確率なんて奇跡に近いと良く言うけれど、運命の人だと思っている。ここまで愛してた人は今までいない。


主人はアスペルガーで一部軽い学習障がいがある。文章を読むのが苦手なのだ。子供の頃の読書感想文は一度も提出せずに切り抜けたらしい。

今はあまり気にならないレベルだが、触覚過敏があるらしい。私が突然触れたりすると激しい拒否反応を示して振り払う事があった。

逆に温度に対する感覚鈍麻があり、冬でも半袖ハーフパンツ素足で過ごす。

表現力に乏しく、話し合いをしても主人は自分の考えている事や言いたい事を言えない。たまに話してくれても、主人の言っている事はほぼ理解できない。

ただ、やはり言語分野以外で、天才的な頭の回転の持ち主だった。それが私には魅力的に感じてしまった。

また、他の人とは違う思考や、自分は自分だというスタンスも、私には魅力的に感じた。

そしてなにより純粋だ。


アスペルガーだと分かってからは色んな対応が出来るようになった。

ある日、仕事帰りに突然雨が降り出した。行くところがあったが、洗濯物を干していたので、一旦帰宅して洗濯物を取り込んでまた出掛けようと家に駆け込んだ。

すると、主人の物だけが取り込まれていた。ピンチハンガーからも器用に主人のものだけをピックアップしていた。

少し前から主人の精神面に余裕がなくなっている事には気付いていたが、この仕打ちに私はとても嫌な気分になった。

ピンチハンガーから一つ一つピックアップする方が面倒なのに、そこまでして私の存在を無視したいか?そんなに私の事が嫌なのか?


すぐに荷物をまとめて実家に帰った。

書き置きをした。

アスペルガーの人には、ちゃんと伝えなければ分からないと学んだから。

実家に帰ります。四葉

と書いた後に、なぜ帰るのかを伝えなければ分からないか…と思い。

洗濯物を私のものは無視して自分のものだけを取り込まれたのが嫌でした。そんなに私の存在を無視したいのか?と悲しくなりました。精神的にいっぱいいっぱいでそうなってしまったのは仕方ないと思う。ただ、いまの状況で、一緒にいるのは私も耐えられそうもないので、あなたの心に余裕が出てきたら戻ります。

と付け加えた。


何が嫌だったか。

それによってどう感じたのか。

それを伝える事が大切。そして、その中に感情をぶつけてはいけない。

アスペルガーの人に対して、怒ってしまうと、「怒られている」という事にしか注視できず、内容が入ってこない。意味もなく攻撃をされたと感じるらしい。


対応は出来たけれど、それで私の気持ちが収まるわけではないのが悲しいところだ。

なぜ私だけが頑張るのか。

なぜ私だけが我慢してるのか。

なぜ私ばかり傷つくのか。


私の中の「なぜ」は、きっと別々の人生を選択しない限り、これからもずっと続く。


気付いたきっかけ

いま思えば、アスペルガーの主人との日々には「普通ではない」が散りばめられていた。


何の知識もない私は出会って15年近く、結婚して2年以上経ってから気づいた。


しかも、気付く事が出来たのは私自身が転職をして、障がいのある方の就労支援をする仕事に就いたからだ。

その前は、再就職支援の仕事をしており、その経験で採用されたのだと思う。


障がいと言っても、身体、知的、精神とあり、精神については特に勉強が必要だった。そのため、主人の障がいに気付く事が出来た。

転職によって迫られた勉強が、気付きに繋がった。

きっとこの世には気付かずに苦しんでいる潜在的カサンドラ症候群の人が本当に沢山いると思う。

また、気付かずに離婚して行くカップルも沢山いるだろう。


気付いて半年、カサンドラ自助グループに通うようになって、私の精神面は目に見えて安定した。

それまでは地獄のような日々で、毎日ビクビクしていた。判断力も低下し、結婚生活を継続する決断も離婚する決断も出来ない状態だった。


いま、パートナーのアスペルガー症候群に悩み、苦しんでいる人は、まず自助グループに参加する事をお勧めしたい。

自助グループってどこにあるの!?と分からない方は、インターネットで調べてみて欲しい。

または、お住いの地域の地域の発達障がい者支援センターを調べてみて欲しい。そこへ連絡し、事情を話して面談をして貰えば教えてくれる。

面談が嫌な場合は、その旨も伝えて自助グループを紹介して貰えないか聞いてみるのも良いかもしれない。


私は支援センターにて面談をしてもらい、そこで自助グループを紹介をされた。


気付いた時は何となく、今まで私が悪かった訳でないんだ…と救われた。

少しすると、障がいではどうしようもない…解決法はない…と絶望した。

少しして自助グループに参加。

解決法はないけれど、対処法を考えれば問題が大きくなる事や回数を減らせるようになる事に気付いた。


いまは、ひとまず結婚を継続しようと思っている。

カサンドラ自助グループの仲間もみんな同じなのは「ひとまず」「現時点では」をよく使う。

離婚という二文字は常に頭にあって、一生悩みながら生きていくんだと思う。